日本小児科学会 4月25日ー27日 東京都
ムコ多糖症のスクリーニングシステムの開発
タンデムマスを用いてI、U、V、W、Y型の患者と正常者サンプルを用い、血中のムコ多糖(KS,DS,HS)をそれぞれの酵素で消化し、2糖を測定し診断できるかを検討した。1例のT型、1例のW型を除き診断可能であった。タンデムマスを用いこれら疾患が、特異性・感度とも問題なく診断できることが判明した。
ライソゾーム病に対する酵素補充療法におけるクリニカルパスの運用
ムコ多糖症U、Y型、ファブリー病の酵素補充療法の点滴速度、チェックリストなどのCPを作成し、日帰り入院で治療を行っている。今後月間スケジュール管理、効果判定を含めた年間パスの作成予定である。
ムコ多糖症の酵素補充療法:T型5例、U型4例の使用経験
T型:ハーラー12歳、シャイエ26-58歳、U型軽症型6歳から44歳に対し週1回の酵素補充療法を行った。呼吸状態、肝脾腫、皮膚、毛髪の性状、関節の可動域、睡眠時無呼吸の改善が認められたが、心弁膜の肥厚、角膜混濁、難聴に関しては観察期間で変化を認めなかった。
酸性アミノ酸をつけた酵素補充療法の有効性の検討、ムコ多糖症Z型マウスモデルを用いて
酸性アミノ酸タグのペプチドをつけた酵素と通常の酵素をモデルマウスに投与し、血中での半減期、臓器分布、蓄積物質の減少度を比較検討した。タグのついた酵素は5倍半減期が長く、脳でも蓄積物質の減少が認められた。また血中のムコ多糖の減少もタグつきの方が減少度がよかった。タグつき酵素の方がよりよい臨床効果が得られる。
モルキオ病W型マウスの新生時期からの酵素補充療法
生直後から14週までモデルマウスに毎週酵素補充療法を行った報告。生直後から酵素補充療法を行ったマウスでは、骨や、軟骨、脳にも蓄積物質が認められず、早期の治療にて発祥の予防が出来ることを確認した。
ろ紙血検体を用いたファブリー病のスクリーニングの試み
マススクリーニングのろ紙血を用い、酵素活性を測定することによりファブリー病のスクリーニングを行った。4500検体で8名の酵素低下が、ハイリスク成人4100名中23名で酵素の低下が認められた。ろ紙血を用いる方法は簡便であり、有用なスクリーニング方法である。
ファブリー病のろ紙血スクリーニング陽性者を対象とした遺伝子解析
酵素活性低値を示したヒトに、遺伝カウンセリングを行った上で遺伝子解析を行った。72名の対象者4名で遺伝子変異を、マススクリーニングろ紙血陽性者13名中9名に遺伝子変異を認めた。
AAVセロタイプ1ベクターを用いた新生児ファブリー病モデルマウスの遺伝子治療
AAVの1型ベクターを用い、新生児と成人にベクターを静注し、組織分布、有効性を検討した報告。成人では肝臓での高率の発現を、成人、新生児とも心臓での強発現を認め、新生児ではすべての臓器での発現を認めたが、成人肝での発現より低値であった。新生児への遺伝子治療は性差、免疫反応が少なく有効治療法である。
乳児期発症ポンペ病患児に対する酵素補充療法2年の経過
生後5ヶ月で診断され、6ヶ月から投与を開始した症例。投与3ヶ月で心機能の改善が認められたが、筋に対する反応はいまひとつである。2年2ヶ月の経過で、副作用もなく、精神発達は問題ない。
酵素補充療法を行ったムコ多糖症1型の1例
1歳2ヶ月のハーラー症候群に酵素補充療法を行った。肝腫大は早期に軽快し、2ヵ月後呼吸症状軽快し、心弁膜症は進行が認められない。精神運動発達も比較的良好に保たれている。
モルキオ病Aの成長発達曲線
モルキオ病Aに登録された354名の患者さんの成長発育曲線を検討した報告。男性の最終身長は122cm、女性は113cmで1歳以降に成長障害が認められる。
モルキオ病Aのモデルマウスを用いた酵素補充療法
遺伝子組み換えで作成された酵素と、活性化を増強させた修飾酵素の2種を用いて、マウスに投与し効果判定を行った。いずれの酵素にても蓄積物資の低下が認められ、酵素補充療法の有効性が確認できた。
 日本小児神経学会 2008年5月28-31日 東京都
テイ・サックス病ーヘキソサニニダーゼAにおける構造変化と臨床表現型との関連性
ヘキソソミニダーゼAの分子モデルを構築し、テイ・サックス病で報告されている35種類のアミノ酸置換がどのように立体構造変化を引き起こすかを検討した。乳児型において認められる構造変化は大きく、酵素分子の深部であり、遅発型では構造変化が小さく、分子表面に局在する。
GM1ガングリオシドーシスとオートファジー機能異常
GM1ガングリオアシドーシスの病態解明のためモデルマウスを用いてオートファジー機能について検討した。生後10ヶ月のモデルマウスの大脳、中脳、小脳においてオートファジー機能蛋白の上昇、ミトコンドリアの形態異常、膜電位の低下、酸化ストレス応答の異常が認められ、オートファジー機能障害、ミトコンドリア機能不全を起こしていると考えられる。
小児大脳型ALDの視覚性事象関連電位P1成分の検討ー発症極早期診断における有用性
発症前男児8名において視覚提示による事象関連電位P300課題のP1成分を検討した。8歳以降ではP1成分高値は発症を疑う所見となりうる。VEPP100の高振幅、P300のP1成分高値は視覚系認知機能を詳細に検討する必要がある。
長期経過観察を観察しえたカナバン病の日本人女性例
1歳前から発達の遅れ、4歳から頭囲拡大を認めカナバン病と診断された。17歳で経管栄養、19歳で経鼻エアウェイ、20歳でGERの手術を受けた21歳例の報告。
ムコ多糖症U型の閉塞性呼吸障害にNPPVが有効であった2例
18歳男児で15歳より開始した例、13歳男児で12歳時呼吸不全により開始した例。気道狭窄が強い場合でも、下顎バンド、エアウェイの使用により有効な場合がある。
酵素補充療法を開始したムコ多糖症U型の1女児例
19歳女児。兄が同じ疾患で20歳で死亡。1歳時に診断され、19歳から酵素補充療法。兄よりは経過がゆっくりである。
臍帯血幹細胞移植を施行したハンター症候群の中枢神経系における組織学的検討
6歳9ヶ月男児が臍帯血移植後10ヶ月で死亡した剖検脳を組織学的に検討した。脳組織では蓄積物質が多く認められたが、血管周囲には酵素陽性細胞が認められ、ドナー由来細胞が由来したと考えられ、長期的には効果が期待できると考えられる。
乳児型ポンペ病に対して酵素補充療法を行った1例
6ヶ月時に乳児型ポンペ病と診断され、8ヶ月時から酵素補充療法を行った。心機能は改善したが、筋力低下は改善しなかった。呼吸器感染の繰り返しのため、3歳時に気管切開喉頭分離術を行い、在宅へ移行した。
酵素補充療法が有効であった糖原病U型の1例
生後2ヶ月口唇口蓋裂、心機能異常で紹介され、左心室緻密化障害と診断されフォローを受ける。独歩1歳6ヶ月。3歳時に左心機能不全、人工呼吸器、気管切開となり、4歳時には寝返りも不可となる。筋生検から糖原病の診断にたる。4歳9ヶ月から酵素補充療法を開始し、2週で座位可能、2ヵ月後に支持歩行可能となり、3ヵ月後には心機能も改善した。本症例では、筋症状、心症状も改善した。
遅発型ポンペ病の診断に関する問題点について
遅発型29例の分析。診断年齢は平均21歳、主訴は筋力低下、診断までに呼吸不全を呈した症例は7例。確定前の診断は筋ジストロフィー12例であった。筋症状を呈する患者には早期のリンパ球での酵素診断が有用である。
小児型ポンペ病における酵素補充療法の早期効果
4歳児発症の患者で5歳児診断。10歳より酵素補充療法を行った。3回の投与から運動機能の改善を認めたが、心機能に関しては悪化した。
糖原病U型の若年症例に対する酵素補充療法
3歳時から肝機能障害、12歳時に筋症状で診断され、16歳から酵素補充療法を受けている男児。10歳時に鼻咽頭閉鎖不全より、糖原病と診断15歳から酵素補充療法を受けている女児。前記の妹で13歳から酵素補充療法を受けている。いずれも握力など四肢筋の改善がみとめられるが、呼吸機能に関しては現時点での評価は困難。
遅発型ポンペ病に対する酵素補充療法の検討
1年以上酵素補充療法を行っている4例の検討。17歳から39歳で、全例で徒手筋力テストでは改善を認めたが、ベースラインが良い症例ほど改善度が良い。28歳の症例は24時間補助呼吸を必要とする症例で、呼吸機能の改善は認められず、1年9ヵ月後死亡。死後の病理所見で、心、肺病変の器質化、筋の空胞変性があり、早期の治療開始が必要。
成人型ポンペ病における酵素補充療法の評価
20歳より発症し、33歳から24時間の補助呼吸(NIPPV)を受けた37歳女性の報告。1年6ヶ月の経過では有意の改善は認めていない。FIMスコアを用いたADLでは軽度の改善有り。
糖原病U型小児型症例における4年間の酵素治療の経過
1歳時に高CKから糖原病と診断。軽度の心肥大あり。独歩1歳6ヶ月。3歳時骨髄移植、4歳8ヶ月呼吸不全から気管切開。12歳から側弯進行、歩行不能となる。14歳から酵素補充療法を受け、上肢の筋力改善、その他下肢、呼吸状態は変化なし。16歳時側弯の手術。下肢筋はほとんど脂肪変性。筋が変性する前の早期の治療が大切?
米国での2重盲検法による若年、成人型に対する酵素補充療法の有効性の検討
10歳から70歳の呼吸器を使っていない、呼吸機能の評価のできる症例90例の検討。6分間歩行、呼吸機能もプラセボ群に比較し改善。酵素投与に伴う副作用で1例は中止、抗体は全員に認められたが投与とともに低下。有効な治療法である。
 日本先天代謝異常学会 平成20年11月6日ー8日 鳥取県米子市
ファブリー病の酵素補充療法に対する新イベントの男女の検討
クレアチニン2mg/dl以下の酵素補充療法(ERT)を受けている41名(男性25名、女性16名)を対象として、心臓イベント発症にいたるまでの経過を検討した。ERT開始年齢は女性45.9歳、男性27.5歳であった。心筋壁の厚さは男女で有意差はなかった。心イベントは男性で12/25、女性で11/16で男女間で有意差はなかった。心イベントに関し、ERTは男女間で差はなかった。
透析患者におけるアガルシダーゼ・アルファの血清中、お指リンパ球中の酵素活性について
48歳男性患者において透析中と非透析中での投与酵素活性の動体を検討した。酵素活性値は血漿中では終了時がピークで投与開始後24時間で前値となった。リンパ球の酵素活性は投与後24時間でピーク値となり7-8日で約半減した。透析中でも酵素補充療法は膜に吸着されたり、排泄されることもなく、薬物動態においては問題ないと考えられた。
ろ紙血検体を用いたファブリー病のスクリーニング
ろ紙血での酵素活性測定により新生児約82000人に16人の酵素活性低値を認め、心不全、腎不全のハイリスク群では約5000人に11人の遺伝子異常を確認できた。患者頻度は4000-5000人に1人、保因者は1/320と推定される。
ファブリー病ハイリスク・スクリーニングの研究
ファブリー病の家族歴あるもの、何らかのファブリー病の症状を呈する男性52名、女性49名において、尿中の酵素蛋白の測定、脂質(GL-3)の測定によるスクリーニングを行った。同時に2種測定することにより、古典型ヘミ接合体、ヘテロ接合体をほぼ100%捕捉できる。
ファブリー病スクリーニングで見つかった新規遺伝子変異について
新生児マススクリーニングで約12万で23名酵素活性の低値が認められ20名で遺伝子異常が判明した。ハイリスク群では約6400人で167名の酵素異常が判明し、22名で遺伝子異常が判明した。
ファブリー病患者血漿中リゾーCTHの測定
健常人では認められないが、古典型患者では高値を示し、ヘテロでもピークが認められ、ヘテロ接合の女性の診断に有用?
血管内皮細胞を用いたファブリー病の病因に関する研究
培養血管内皮細胞を用い、グロボトリオシルセラミド(Gb3)負荷により、酸化的ストレスが増加し、細胞接着因子の発現が増強することが判明。Gb3の蓄積が血管病変の病態に寄与していることが判明
組換えヒトαガラクトシダーゼとその基質アナログとの分子間相互作用と酵素増強作用の解析
組換えヒトαガラクトシダーゼに対し基質アナログの阻害効果、結合常数などを解析し、デオキシガラクトノジリマイシンが一番強い阻害効果を示し、Q279E変異に対し酵素増強作用を有した。複合体の構造モデリングにより、そのメカニズムを推察した。
基質アナログによる変異αガラクトシダーゼの安定化
患者由来の変異酵素(M51I)を用いて、基質アナログによる変異酵素の安定化について生化学的に検討した。安定化は酸性条件下でより強く認められ、デオキシガラクトノジリマイシンが一番強い
 国内最新文献 8−11月
心筋症 基礎と臨床:Up to Date 臨床研究の進歩 各病型を理解する 心ファブリー病 
医学のあゆみ 226巻 1号54−58 
心ファブリー病の酵素補充療法を含めた総説
肥大型心筋症と診断されていた心ファブリー病の1例 Therapeutic Research 29巻9号 1579−1582
69歳男性。40歳から蛋白尿、56歳で肥大型心筋症。1年間の酵素補充療法で心機能の変化はないが、腎機能は悪化している。
酵素補充療法を行っているファブリー病透析患者の1例 酵素製剤の効果と副作用対策 長野県透析研究会雑誌 30巻1号 53歳男性。20歳児に診断。47歳から透析。酵素補充療法を行い、副反応は認められtが、抗アレルギー剤で対応し、心筋容積の減少効果が認められた。
腎生検の電顕写真が有用であったファブリー病の1例 自治医科大学臨床検査技師年報30号 31−33
25歳男性患者が検診で蛋白尿指摘。腎生検で診断にいたる。
ミオパチー臨床と治療研究の最前線 代謝性ミオパチーの治療:現状と未来 ポンペ病酵素補充療法の現状と診断方法及び病態研究における進歩 医学のあゆみ 226巻5号 411−415 ポンペ病の治療の現状と酵素診断法の解説。また、オートファギーが病態の一員であることを示唆。
血小板減少を契機に63歳で派遣されたゴシェー病T型 臨床血液 49巻5号 335−339 63歳男性の報告。
タンデム質量分析計を用いたファブリー病の尿中グロボトリアオシルセラミドの測定について 日本マス・スクリーニング学会誌 18巻1号 31−40 タンデムマスによる血漿・尿中GL-3の測定法の開発とELISA法による尿αGal蛋白の測定を併用し、マス・スクリーニング法の開発の報告
ムコ多糖症に対する酵素補充療法の導入と新生児マススクリーニングの可能性 日本マススクリーニング学会誌 18巻1号 23−28 ムコ多糖症T、U、Y型の酵素補充療法が可能となり、早期発見、早期治療も考えられる。しかし、中枢神経病変の効果がない、遺伝性疾患に関する遺伝カウンセリング体制の整備など、新たな体制構築が必要である。
ガラクトシアリドーシス(晩期乳児型)の眼所見 臨床眼科 62巻8号 1303−1307 2歳9か月の症例報告
ムコ多糖症児の身体的な特徴の明確化 母性衛生 49巻2号 295−302 
ムコ多糖症の養育者にアンケート調査を行い、養育者から見た異常を報告
乳児神経セロイドリポフスチン蓄積症パルミトイルプロテインチオエステラーゼ酵素活性欠乏により診断された日本における最初の報告 Brain&Development 30巻5号 370−373 37カ月男児。14カ月から発症し19か月には低緊張性四肢麻痺。
各種難病の最新治療情報 ムコ多糖症T型の最新治療薬と臨床具体事例 難病と在宅ケア 14巻5号 40−43
ムコ多糖症T型治療法の解説
各種難病の最新治療情報 ポンペ病の診断・治療のガイドラインと患者・家族の抱える問題点 難病と在宅ケア 14巻8号 48−50 
ポンペ病の診断・治療に関する解説
α-L−イズロニダーゼ変異の構造研究 T型ムコ多糖症についての洞察 J Hum Genetics 53巻5号 467−474 
αーL−イズロニダーゼの33種のアミノ酸置換の変異の蛋白構造解析を行い、臨床の重症度と変異の程度の相関を検討した。重度群では大きな構造変化が分子のコア領域に生じている一方、軽症群では小さな構造変化が表面領域で生じていることが判明した。

学会報告
ニーマンピック病C型マウス脳のけるユビキチン及びユビキチン化タンパク質の性状解析 神経科学学会
βーガラクトシダーゼ欠損症マウス脳の神経変性におけるTrk受容体の機能異常 神経科学学会
サンドホッフ病モデルマウスを用いた網羅的サイトカイン解析 日本病理学会
サンドホッフ病モデルマウス由来ミクログリアにおけるMIP−1α産生誘導メカニズムの解析 日本生化学学会
ムコ多糖症U型の2症例 日本小児整形学会
モルキオ症候群患者の麻酔経験 麻酔学会
先天性ムコ多糖症家族の精神的健康 精神神経学会


酵素補充療法を行っている乳児型ポンペ病の治療経過 日本小児循環器学会
成人型ポンペ病に対する酵素補充療法に治療経験 日本神経学会

濾紙血を用いたファブリー病の新規高感度診断法 東京都福祉保健学会
ファブリー病の酵素補充療法開始年齢に関する検討 日本小児循環器学会
心室頻拍を契機に心ファブリーと診断し劇症型心筋炎にて心臓突然死した1例 日本小児循環器学会
肥大型心筋症におけるファブリー病の頻度 心内膜心筋政権による検討 循環器科学会 
心室頻拍を契機に診断し得た心ファブリー病の1例
ファブリー病モデルマウスにおけるガラクトシルセラマイドの蓄積と酸化ストレス 日本腎臓学会
腎障害が進行したファブリー病に酵素補充療法を施行した1例 日本腎臓学会
ファブリー病による末期腎不全患者の1例 日本腎臓学会
若年性の脳梗塞を発症したファブリー病の1症例 日本腎臓学会
兄の腎生検を契機に診断ついたファブリー病の兄弟例 日本腎臓学会
治る腎炎、治らない腎炎:point of no returnはどこにあるのか?濾紙血酵素活性測定法を用いたファブリー病の早期発見とその診断 日本腎臓学会
ファブリー病に対する酵素置換療法 心臓への影響の性差 日本循環器学会
左室肥大を有するファブリー病患者におけるαガラクトシダーゼA遺伝子内新規変異の検出 日本循環器学会
遺伝的に立証されたダノン病患者51名の心臓障害の臨床象 日本循環器学会
ファブリー病の1例 日本皮膚科学会
症候性、無症候性脳梗塞を繰り返したファブリー病の1例 日本内科学会関東地方会

コロジオン児として出生した新生児型ゴーシェ病の1例 日本周産期・新生児学会
GM2ガングリオシドーシスモデルマウスに対する組換えヒトβ-ヘキソサミニダーゼの脳内補充効果 脂質生化学研究
サンドホッフ病モデルマウスに対するメタノール資化性酵母由来組換えヒトβ-ヘキソサミニダーゼの脳内補充効果 生化学学会
 国外最新文献5−7月
 Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Aug 11. [Epub ahead of print]
Identification of a vesicular aspartate transporter.
シアル酸蓄積症の原因蛋白であるシアリンがアミノ酸のアスパルミン酸、グルタミン酸のトランスポーターとなっているという報告。脳でのシナプスのアスパルミン酸の膜輸送を担っており、この異常が、シアル酸蓄積症の神経病変を説明できるかもしれない。
 Nat Biotechnol. 2008 Aug;26(8):901-8
Neutralizing antibodies to therapeutic enzymes: considerations for testing, prevention and treatment.
リソゾーム病に対する酵素補充療法では、投与酵素に対する中和抗体がしばしば認められる。このことが臨床効果や副反応に影響を与える。中和抗体の測定、副反応の予防、治療の総説。
 Biol Cell. 2008 Aug 6. [Epub ahead of print]
Endosomal lipid accumulation in NPC1 leads to inhibition of PKC, hypophosphorylation of vimentin and Rab9 entrapment.
低分子GTPaseのRab9がニーマンピック病C型細胞における脂質輸送を改善することが判明しているが、そのメカニズムを解明した報告。Rab9が中間系フィラメントのリン酸化蛋白ビメンチンと結合する。蓄積した脂質はプロテインカイナースCの活性化を阻害し、ビメンチンのリン酸化を抑制し、Rba9とビメンチンの結合を障害し、エンドゾームの機能を障害を引き起こす。Rabがビメンチンとともに脂質輸送に関与しているとの報告。
 Curr Pharm Des. 2008;14(16):1566-80
Immune response hinders therapy for lysosomal storage diseases.
リソゾーム病における脳血液関門の病態、治療における問題点の総説。
 J Clin Invest. 2008 Aug 1;118(8):2868-2876
Immune tolerance improves the efficacy of enzyme replacement therapy in canine mucopolysaccharidosis I.
24匹のムコ多糖症T型のイヌのモデルを用い、免疫寛容(投与酵素に対し抗体が出来ないようにした)を誘導したモデルとそうでないモデルを用い、酵素補充療法の有効性に関し比較検討した。免疫寛容を誘導したモデル犬では明らかに、組織での酵素活性も高く、蓄積物質の減少もよく、酵素補充療法の有効性を確認できた。
 Bone Marrow Transplant. 2008 Jun;41 Suppl 2:S87-9
The controversial and changing role of haematopoietic cell transplantation for lysosomal storage disorders: an update.
リソゾーム病におけるj骨髄移植の有効性に関する解説。
 J Neurosci Res. 2008 Jul 21. [Epub ahead of print]
Identification of new markers for neurodegeneration process in the mouse model of Sly disease as revealed by expression profiling of selected genes.
ムコ多糖症Z型のモデルマウスを用い、神経変性のメカニズムを解明するため、種々の脳組織で、病期との関連で、炎症と細胞死に関する遺伝子発現を検討した。病期の進行に関する27の遺伝子を同定した。症状が発現する前のマーカーとしてこれらの遺伝子発現を利用できる。
 Biochim Biophys Acta. 2008 Jul 1. [Epub ahead of print]
Autophagy in neurodegeneration and development.
細胞の機能維持のためにオートファジーの重要性を指摘した総説。神経変性を引き起こす細胞内蓄積物質の凝集を防ぐためにラパマイシンのようなオートファジーを誘導する薬物が治療に使える可能性を指摘。リソゾーム病を含めオートファジーのなす病態に関する役割を検討する重要性を指摘した総説。
 Muscle Nerve. 2008 Aug;38(2):1012-5.
Late-onset Tay-Sachs disease: The spectrum of peripheral neuropathy in 30 affected patients.
30例の晩期発症のテイサックス病患者の、末梢神経障害に関する研究の報告。27%の患者に四肢に、末梢性の多発性の軸策変性を伴う神経変性を認めた。
 Genet Med. 2008 Jul 16. [Epub ahead of print]
Creating genetics-based infusion centers: a case study of two models.
リソゾーム病に対する酵素補充療法が一般的に行われるようになり、米国で遺伝部門を備えた施設に外来での酵素補充療法専門のセンターが作られたという報告。
 Hum Mol Genet. 2008 Apr 15;17(R1):R76-83.
Stem cell-based strategies for treating pediatric disorders of myelin
ミエリン形成障害やミエリン変性を来たす疾患に対して、グリアの前駆細胞の移植が有効であり、現在その研究段階の解説。
  J Inherit Metab Dis. 2008 Jul 13. [Epub ahead of print]
Neurological findings in Hunter disease: Pathology and possible therapeutic effects reviewed.
ハンター症候群の神経学的な病態を中心に述べた総説。どのような点に酵素補充療法が有効であるかを記載。
 Pediatr Res. 2008 Jul 3. [Epub ahead of print]
Clinical, electrophysiological, and serum biochemical measures of progressive neurological and hepatic dysfunction in feline Niemann-Pick type C disease.
16匹のニーマンピック病T型のモデルネコを用い、神経病変、肝病変がどのように進行していくかを検討した報告。ネコは経過とともに、小脳症状、前庭機能障害を引き起こしてくる。これは、回転運動後の眼振、ABRの異常で定量的に評価できる。また、年齢とともに肝機能異常、コレステロールの上昇を呈する。平均20.5週で死亡する。ニーマンピック病C型での肝機能異常をを指摘した。
 J Gene Med. 2008 Jul 9. [Epub ahead of print]
Improved retroviral vector design results in sustained expression after adult gene therapy in mucopolysaccharidosis I mice.
肝発現特異的プロモーター(ヒトαアンチトリプシン)と、ガンマレトロウイルスベクターを用いて、ムコ多糖症T型の6週のモデルマウスに静注し、肝で発現し、血中で約90%のマウスにて低値ではあるが安定した発現を認めた。6.5ヶ月後の解析では組織での酵素活性の高値、蓄積物質は認められなかった。聴力、視力も問題なく、骨病変も改善した。成人のマウスに免疫抑制剤を用いることなく、レトロウイルスで安定した発現を得られたという報告。
 Behav Brain Res. 2008 Nov 21;193(2):315-9. Epub 2008 Jun 20
Early deficits in motor coordination and cognitive dysfunction in a mouse model of the neurodegenerative lysosomal storage disorder, Sandhoff disease.
サンドホッフ病のモデルマウスの神経病変、運動機能、認知機能について検討した報告。早期から短期記憶、協調運動障害が認められる。
 Cytotherapy. 2008 Jun 3:1-8. [Epub ahead of print]
Isolation of oligodendrocyte-like cells from human umbilical cord blood.
ヒト臍帯からオリゴデンドログリア様の細胞をタン利することに成功した報告。単離した細胞はオリゴデンドログリアのマーカーを発現し、神経細胞との培養にて、ミエリン形成を示すことを示した。ヒト臍帯からの細胞が、細胞治療としてミエリン異常症の治療に使える。
 Dev Cell. 2008 Jul;15(1):74-86
Neuraminidase 1 is a negative regulator of lysosomal exocytosis
シアリダーゼを欠損するマウスよりのマクロファージ、皮膚線維芽細胞でのリソゾーム膜蛋白であるLAMP-1はシアル酸が多く結合している。また、リソゾームのexocytosisが亢進している。これはシアリダーゼ欠損マウスではセリンプロテアーゼが多く分泌されていることの説明になるのではないか、またリソゾームの細胞外分泌が予期せぬ病態を引き起こしているのではないか。
 Haematologica. 2008 Aug;93(8):1211-8. Epub 2008 Jul 4
A new severity score index for phenotypic classification and evaluation of responses to treatment in type I Gaucher disease.
ゴーシェ病では4800人以上が酵素補充療法を受けている。T型患者では症状の程度や、酵素補充療法の反応も様々である。6項目においてスコア化し、今まで使われているスコア(Zimran)と比較し、その有効性を確認した。 
 Folia Neuropathol. 2008;46(2):123-33
Pathology of skeletal muscle cells in adult-onset glycogenosis type II (Pompe disease): ultrastructural study.
成人型糖原病U型の筋病理の報告。筋病理はオートファジーべジクルが集積した状態が主病変である。
 Eur J Med Genet. 2008 Jul-Aug;51(4):315-21. Epub 2008 Mar 4
Molecular analysis of Turkish Gaucher disease patients: Identification of novel mutations in glucocerebrosidase (GBA) gene.
トルコでの57例のゴーシェ病患者の遺伝子変異に関する報告。L444P変異が42%、N370S変異が30%を占める。
 J Neurosci. 2008 Jun 25;28(26):6569-82
Neuronal loss of Drosophila NPC1a causes cholesterol aggregation and age-progressive neurodegeneration
ショウジョバエの二ーマンピック病のモデルを用いて病態解析を行った報告。神経細胞のコレステロールの細胞内輸送にはNPC1遺伝子が必要であり、その障害で神経細胞死が神経症状の進行をきたす。
 J Pediatr. 2008 Jul;153(1):89-94. Epub 2008 Feb 14
Cognitive outcome in treated patients with chronic neuronopathic Gaucher disease.
酵素補充療法や骨髄移植療法を受けた32例のゴーシェ病V型患者の認知評価を行った。全IQは32−124で平均75であった。60%の患者では平均以下であり、VIQとPIQの解離が認められた。これは年齢とともに強くなり、IQの変化は治療とは関係なかった。
 Biochem J. 2008 Jun 20. [Epub ahead of print]
Dipeptidyl-peptidase I does not functionally compensate for the loss of tripeptidyl-peptidase I in the neurodegenerative disease late-infantile neuronal ceroid lipofuscinosis.
晩期乳児型のセロイドリポフスチノーシス(NCL)ではTPP1の欠損症であるが、全身のこの酵素欠損であるが、病変は脳に限られている。このため、脳以外の組織では基質のオーバーラップのあるジペプチディールペプチダーゼ1(DPP1)が代償していると考え、この2種の酵素を欠くマウスを作製し検討したが、症状にはTPP1欠損症マウスと変化なかった。また、脳でDPP1の2倍の活性を示すモデルマウスを作製したが、症状を軽減させることはできなかった。このため、DPP1をNCLの治療には使用できない。

 Acta Radiol. 2008 Jul;49(6):687-92
Bilateral pulvinar signal intensity decrease on T2-weighted images in patients with aspartylglucosaminuria.
アスパルチルグルコサミン尿症の11名の患者(3-32歳)のMRIを分析し、視床の両側のT2での高信号は病初期早期から現れることを見出した。
 AJR Am J Roentgenol. 2008 Jul;191(1):115-23
Correlation of MRI-Based bone marrow burden score with genotype and spleen status in Gaucher's disease.
47名のゴーシェ病患者の骨MRIを検索し、骨病変と遺伝子変異、摘脾、脾腫との関係を検討した。N370Sのホモの患者より、この変異のヘテロ患者の方が骨病変が強く、脾腫や、摘脾は骨病変を増強させる。
 Pediatr Neurol. 2008 Jul;39(1):52-4
Danon disease: an unusual presentation of autism.
LMP2の欠損症であるダノン病の症例報告。嚥下障害を伴う筋緊張低下があり、自閉症も合併していた。
 Calcif Tissue Int. 2008 Jun 14. [Epub ahead of print]
Changes of Bone Metabolism in Seven Patients with Gaucher Disease Treated Consecutively with Imiglucerase and Miglustat.
酵素補充療法を受け基質抑制療法に移行した7例の患者さんの骨病変に関し検討した報告。基質抑制療法6か月の短期であるが、1例では骨病変の進行、マーカーの悪化を認めたが、全体的には骨病変、骨マーカーではほとんど変化を認めなかった。
 Hum Mol Genet. 2008 Jun 11. [Epub ahead of print]
AUTOPHAGIC DYSFUNCTION IN MUCOLIPIDOSIS TYPE IV PATIENTS 
ムコリピドーシスW型の病態解明を培養皮膚腺芽細胞を用いて行った報告。培養皮膚線維芽細胞ではオートファゴゾームの蓄積が認められ、これはオートファゴゾームの生成亢進と、エンドゾームとの融合がうまくいっていないことが判明した。このことはユビキチンたんぱくの蓄積を引き起こし、その結果、神経変性をきたしていると考えられた。ムコリピン1蛋白が、オートファゴゾ−ム、エンドゾームとリソゾームの融合に重要な役割をなしていることを示唆する。神経変性疾患におけるオートファゴゾームの役割を示唆するデータである。
 Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Jun 17;105(24):8375-80. Epub 2008 Jun 10
Infused Fc-tagged beta-glucuronidase crosses the placenta and produces clearance of storage in utero in mucopolysaccharidosis VII mice.
リソゾーム病の胎児では時に胎児水腫が認められる。母体を介した胎児への酵素治療の研究のために、ムコ多糖症のZ型のモデルマウスを用い、酵素(βグルクロニダーゼ)のC端にFcレセプターをつけた酵素を作成し、17,18日胎児の母胎に注射し、胎盤を介し胎児に移行することを確認した。タグのない酵素では活性の上昇が認められず、蓄積物質の減少もなかった。この方法は、胎児治療にも応用ができ、また、免疫寛容を作成する方法ともなる。
 J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2008 Jun 5. [Epub ahead of print]
Central nervous system involvement in anderson-fabry diease: A clinical and MRI retrospective study.
43名(男性25名平均42歳、女性18名平均52歳)の臨床とMRIの検査の報告。男性17名女性7名が酵素補充療法を受けている。男性64%、女性の72%に種々の脳病変を呈していた。男性6名、女性5名では脳血管障害を引き起こしていた。酵素補充療法を受けていても脳血管障害を呈した症例があった。

 J Cardiol. 2008 Feb;51(1):50-9. Epub 2008 Feb 6
Terminal stage cardiac findings in patients with cardiac Fabry disease: an electrocardiographic, echocardiographic, and autopsy study.
左室肥大を呈する心筋症の3%が心ファブリー病である。7名の心ファブリー病の末期の新病変を評価した。6名は心不全で、1名は心室細動で死亡した。心電図では伝導障害を示し、エコーでは左室肥大、後壁の心筋は薄くなっていた。病理所見では心筋細胞への脂質の沈着が認められ、内皮細胞には沈着は認められかった。また、他の臓器への沈着も認められなかった。心ファブリーでは末期には不整脈が出現してくる。

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